令和5年度岩手県医師会事業計画
昨年2月からのロシアのウクライナ侵攻は深刻な人道危機をもたらしているばかりでなく、世界の経済にも大きな影響を与えている。国際的な需要低下や価格上昇に加えて、日本では米国との金利差による円安状況が、家計を圧迫し日常生活に暗い影を落としている。
医療界も新型コロナウイルス感染症に振り回された1年であった。変異株対応のワクチン開発、接種、新たな治療薬の承認などで、発生当初よりは重症化率は低下した。しかし、コロナ禍で政府が感染防御と社会経済活動の両立にシフトしてから家庭内感染の増加などで医療従事者の欠勤が相次ぎ、通常診療との兼ね合いで医療逼迫状態が続いている。今後もwithコロナでの医療体制強化、堅持が重要である。
コロナ以外でも問題が山積している。医師の働き方改革制度の開始が迫っている。全国一律の制度では岩手県の医療は崩壊してしまう。今までも国会議員等を通して政府には現状と問題点を訴えてきたが、今後も日本医師会も含めて議論を重ねて行かなければならない。国が打ち出している医療DX(デジタルトランスフォーメーション)の基盤となるオンライン資格確認が4月から原則義務化されるが、コロナ禍で医療機関での準備は進んでいないのが現状であり、開始されても色々な問題が起こると思われる。県医師会としては日本医師会と連携して提言をして行く所存である。
国は地域包括ケアシステムの構築に於いて今回、医療と介護の連携強化を重点項目としているが、岩手県では更に在宅医療との連携構築が重要であり、多職種との協議を進めて行かなければならない。それに関連してACPの啓発を積極的に行ってきたが、今後も継続し啓発に努力して行く。他にも喫緊の多くの課題があるが、行政を含めた多職種との横断的な連携構築が必要である。
岩手県医師会は県当局、関係団体、大学医師会、郡市医師会と連携を取り、強い使命感を維持して、県民が幸福感を得られ、人を敬う心の通った社会を目指して県民の医療・保健・福祉に貢献して行くために下記の事業を進めて行く。
1.新型コロナウイルス感染症への対応
2.医の倫理の高揚
3.医療安全対策の推進と医療事故調査制度への対応
4.被災地医療支援、災害時医療活動の充実
5.国民皆保険の恒久的堅持
6.生涯学習の推進
7.医療政策への積極的取組
8.地域医療活動の充実
9.広報活動の活性化
10.適正な保険医療の推進
11.ACP(Advance Care Planning)の啓発と在宅医療支援
12.医療DX(デジタルトランスフォーメーション)・医療情報システムの充実への対応
13.医業承継・税制への対応
14.医療制度改革(地域医療構想・働き方改革・医師偏在対策)への対応
15.少子化・人口減少問題への対応
16.会員福祉の充実