県民のための健康増進情報/泌尿器科
夜間頻尿
-はじめに-
夜、オシッコに起きる-夜間頻尿-、原因は何でしょう? どうすればよいでしょう?
夜、オシッコに起きる原因は色々あり、病気なのか、それとも正常なのか、一概には断定することはできません。男性か女性か、年令は何才か、何か病気を持っているか、などで原因となる要素が変わってきます。ここでは、まず男性に多い前立腺肥大症についてふれ、他に夜間トイレに起きる原因となる疾患や状態を述べてみたいと思います。
-前立腺肥大症-
40才代ごろから「尿の出が悪い、飛ばなくなった」と自覚している男性が多くなってきます。50才代の男性で50%、60才代で60%、70才代で70%の人に前立腺肥大症があるといわれていますが、症状は排尿の時、かなり息まないと尿が出ないとか、夜に何回もオシッコに起きる、トイレが近く排尿の間隔が2時間もたず排尿をしても下腹部がすっきりしない、尿が残った感じ(残尿感)がある、尿意を感じると漏れそうになりトイレに駆け込む、これらの症状は前立腺肥大症の症状であることが多く、男性にとってはイヤなことでしょう。また、自覚症状が出ても泌尿器科で診察を受けることに大きな抵抗がありそのまま症状を引きずったまま時間だけが経過してしまって慢性化する傾向があるようです。
前立腺は男性生殖器で精嚢腺(せいのうせん)とともに精液を分泌する機能があります。膀胱に尿がたまると尿意を感じますが前立腺は膀胱の出口にあり、加齢と共に腫れてくると尿道を圧迫して尿が出にくくなります。これが前立腺肥大症です。特にアルコールを飲むとオシッコがでにくい状態が強くなります。
加齢変化に伴う老人特有の疾患は確かに不可逆的(元に戻らない)なことが多いのですが、高齢化社会の進行により老年医学が研究されてきており、その成果が実際の臨床の場に応用されています。排尿障害を引き起こす他の合併症(脳疾患や脊髄疾患、糖尿病など)がない前立腺肥大症の約90%は内服薬による治療で症状の改善が可能といわれています。しかし、残りの10%の前立腺肥大症は自覚症状の改善がない、膀胱にたまった尿を排泄しきれない(残尿といいます)状態がさらに強くなる、その結果腎臓にまで悪影響を及ぼすなどのため、手術療法が必要です。手術療法は、開腹手術、内視鏡手術、レーザー光線による手術、温熱療法などがあり、専門医とよく相談することが必要でしょう。
前立腺肥大症に悪性はないのか?
良性の前立腺肥大症と悪性の前立腺癌は初期の頃は問診では全く区別がつきません。触診(前立腺は肛門から指で触れる直聴診によって触診ができます)や超音波検査、腫瘍マーカーなどを行いながら前立腺肥大症か前立腺癌かを鑑別しますが、前立腺癌は前立腺生検といって前立腺組織を一部針で切除しそれを顕微鏡で検査する方法によって確定的な診断をつけます。前立腺癌の早期診断や確定診断は泌尿器科の専門医でなければ難しいとされておりますが、今後前立腺癌検診などが実施されると早期発見が可能になると思われます。前立腺肥大症の5〜10%に前立腺癌が潜んでいるといわれていますし、すでにアメリカやカナダでは生存している男性の中で前立腺癌を持っている割合は他の癌に比べ一番多いとの報告もあります。
-前立腺肥大症以外に夜間頻尿の原因となるものは?-
慢性前立腺炎て何ですか?
比較的若い中年前後の男性から徐々に発症が始まるのが慢性前立腺炎です。睡眠不足や疲れ、過度のアルコール摂取などで体の抵抗力が低下すると尿道粘膜から前立腺に細菌が入り炎症を起こしやすくなります。炎症が慢性化すると前立腺肥大症と似た症状を呈するため、専門医でないとなかなか診断できない場合があります。炎症の初期は排尿痛(尿をする時に痛みを感ずる)、頻尿(トイレが近い)、残尿感(尿が残った感じ)が主な症状ですが、夜中や朝方に下腹部に尿がたまっているような鈍痛を感じて目が覚めることがあります。前立腺に細菌性の炎症が起こったばかりの初期に治療しなかったり、または完治しないまま治療を中断すると慢性化しやすいのです。過度の飲酒や疲労、排尿の我慢、体の冷え、性行為感染症などが原因と考えられますが、長期間放置すると難治性(治りにくい)になります。炎症の初期は抗生物質や消炎剤で改善することがおおいのですが、長期化すると難治性になるので気をつけていただきたいと思います。
熟睡できないからトイレに行く?それともトイレに行くから熟睡できない?
-不眠症も夜間頻尿の原因-
不眠症と一言でいっても原因はいろいろあります。寝付きの悪い入眠障害、途中で目が覚める中途覚醒、早朝に目が覚める早朝覚醒、うつらうつらとしか眠れない浅眠、およびこれらの混合型などです。一般には夜は尿が濃くなり、尿量が少なくなりますが、眠れないということは脳が活動しているということで、夜間に尿が濃縮されません。この尿の濃縮作用は夜中に脳下垂体から抗利尿ホルモンが多く分泌されることによっておこります。この働きがあるから夜間は尿量が少なくなり、夜トイレに起きないのです。
しかし夜、目が覚めているとこの濃縮作用がなくなり、何度もトイレに行くことになります。正常な人でも徹夜をするとトイレに何回も行きます。結局眠らないと腎臓で尿が作られトイレに行くということになります。不眠が続くときは、睡眠剤の併用も必要でしょう。
冬になると夜オシッコに起きるのは当たり前?なぜ?なぜ?
体が冷えるとトイレが近くなることは誰でも経験したことがあると思います。これは体が冷えることによって汗をかかなくなり、代謝された水分が汗からでなく尿として腎臓から排泄しなければならないので尿量が増えるのです。特に夜間に体が冷えると尿量が多くなり、夜間のオシッコの回数が多くなる原因となります。冷え性の人は寝る前の入浴や電気毛布を使用するなど、体の冷えに対して工夫した方がよいでしょう。
中年女性以降に多い夜間頻尿
中年以降の女性に多く見られる夜間頻尿は、日中もトイレが近く、尿を漏らすこともあるのです。この頻尿や尿失禁の原因は、慢性膀胱炎(膀胱炎をこじらせてしまった、慢性化した状態)、復圧性尿失禁(膀胱が子宮とともに下降し、膀胱にある程度尿がたまると我慢できずに漏れてしまう。咳やくしゃみでひどく漏れる。別項尿失禁参照)などが考えられますが、原因を確かめ、専門的な治療をしなければなかなか改善しません。