疥癬関係のマニュアルの一例です。 各々病院や施設に適したものに作り直してご利用下さい。



疥癬感染防止マニュアル


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原因など疥癬の性質を知り、疥癬感染症を治療し二次感染の予防に努める。

1.原因
疥癬虫(ヒゼンダニ、大きさ0.2〜0.4mm)がヒトの皮膚内に寄生することによる。疥癬虫の雌(♀)は皮膚に取り付くと10〜40分で角質内に侵入し、表皮角層にトンネルを掘り、そこに1日2〜3個の卵を生み続け、4〜5週間で死ぬ。
卵は3〜4日で孵化し、14〜17日で成虫となり、4〜5週間の寿命を終えるまで10〜25個の卵を産む。疥癬虫は人体を離れると短期間で死ぬ。
通常疥癬は密なヒトとヒトの接触により感染するので、疥癬患者との直接接触や長期間寝起きを共にする場合、又疥癬虫や虫卵を内包している患者から落屑(ふけ)が飛散している部屋、病院、各種施設に出入りする医療従事者、介護者、掃除係や家族などを介して、あるいは落屑が付着している大型寝具、リネン類、医療器具、介護用具などを介して感染する。
疥癬虫が体表から離れた場合には、25℃・湿度90%で3日間、25℃・湿度30%で2日間、12℃・高湿度で14日間生存可能。50℃では湿度に関係なく約10分間程度で死ぬ。

2.病型

■通常の疥癬の場合:隔離の必要なし
■ノルウェー疥癬:隔離の必要あり
感染力が極めて強い重症型の疥癬で、寄生する疥癬虫は通常の疥癬と同じヒゼンダニだが、その数が100万〜200万匹と桁違いに多い。
老齢、悪性腫瘍末期、重症感染症、栄養状態が悪いなど、免疫力が低下している患者や、免疫抑制剤やステロイド剤を投与されている患者に発生しやすい。疥癬と診断がつかず長期間ステロイド外用剤による治療を受けつづけた場合にもノルウェー疥癬となりうる。
特徴的なのは皮膚症状で、骨の突出した部位や四肢の関節の外側など圧迫や摩擦を受けやすい場所に、カキ殻状に重なった厚い角質の増殖が生じ、その中にはダニが層をなして生息している。

3.症状
「かゆみ」は通常最も顕著な症状である。一般的には「かゆみ」は夜間に最も著明となる。「かゆみ」の自覚は、感染後2週間以上、通常1ヶ月経ってから認められるが、再感染の場合には比較的短期間のこともある。
腹部、腋窩、大腿部の紅色小丘疹、外陰部の赤褐色の小結節、手や指の小水疱、疥癬トンネルを特徴とする。ノルウェー疥癬では牡蠣殻状の厚い鱗屑を特徴とする。

4.診断

皮疹をメスで削り取り、KOH法で検鏡。虫体・虫卵を検出すれば確定する。

5.対処法
■入院の受け入れ時
入院のために来院された全ての患者に対して、全身皮膚の観察を行うか、又は本人、家族あるいは介護者に「かゆみ」があるか発疹や発赤の有無を聴取する。
疥癬発症かまたは疥癬を疑われた場合は速やかに主治医に報告し、皮膚鏡検を行い疥癬虫または虫卵の有無を確かめる。

■普通の疥癬患者
普通の疥癬の場合、隔離は必要ないが患者が複数の時は一部屋に収容して治療を開始する。

■ノルウェー疥癬患者に対する対応
ノルウェー疥癬の場合は隔離の必要がある。以下ノルウェー疥癬の対処法を示す。
 ・入浴の順番は原則として最後にすることが望ましい。
 ・リハビリは一時中止する。
 ・治療中は肌着などを毎日交換する。同じ着衣を着続ける時間は最長48時間

※家族について
面会は自粛するよう又は帰宅後に手洗い・シャワーをするように注意を促す。洗濯物はビニール袋に入れて持ち帰り、洗濯機で65℃〜70℃のお湯を用いて洗濯をするように促す。

※介護者
六一〇ハップ(ムトーハップ)による手洗い励行。
介護の際は予防衣・ディスポの手袋を使用。
発疹・かゆみのあるものは速やかに医師等に申し出て適切な処置を行う。

※隔離病室
床は毎日掃除。200倍塩化ベンザルコニウム液にて清拭する。モップ、雑巾などは80℃・10分間消毒後乾燥。

※床頭台・ドアノブ・処置台は塩化ベンザルコニウム液(50〜200倍)にて清拭。

※毛布は週2回、日光消毒または布団乾燥機により熱乾燥。

※リネン類
寝間着は毎日、シーツは1回/週交換
シーツ等リネン類からはダニを落とさないように注意する。
洗濯機で65℃〜70℃のお湯を用いて洗濯。
クリーニングに出す時はビニール袋に入れる、2週間放置した後に出す。

※ストレッチャー・車椅子
50〜200倍塩化ベンザルコニウム液噴霧後清拭

※ポータブルトイレ・洋式トイレ
50〜200倍塩化ベンザルコニウム液噴霧後清拭

※浴場
浴槽の栓を抜きさり、洗剤を用いて洗浄後、熱湯で洗い流す。

※ 医療機器・器具
一般病棟消毒法に準ずる。

6.治療
(具体的治療法は疥癬処置マニュアルに記載)

※薬剤使用上の注意
薬剤を不必要に使用しない(量・期間)。(疥癬虫のライフサイクルは約2週間)
湿疹様変化を生じても虫体や卵が生存している内はステロイド外用剤は使用しない。
かゆみが激しい時は抗ヒスタミン剤の内服を使用する。
角質軟化作用のある10〜20%尿素軟膏(ウレパール・ケラチナミン等)の併用も効果的である。

※予防的治療
オイラックス軟膏を連続7日間、入浴後身体を乾かし頚部から下全身に塗布する。
六一〇ハップ浴:キャップ1杯=約7g
 ・入浴の場合:お湯180Lに対し13〜17gの原液を入れる。
 ・塗布法:原液を5倍に薄め患部に塗布する
 ・湿布法:原液を50倍に薄め湿布する。




疥癬処置マニュアル

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皮膚科処置

※介護者の服装
出来ればつなぎ服、出来なければ使い捨てガウンを着用。(ガウンをつるして複数回数使用は表から裏に疥癬虫が入り込むので危険)履物は、軍足のような靴下を履きサンダルに履き替え処置後直ちに熱湯消毒。

※処置
入浴できる人は極力六一〇ハップ浴を行う。
六一〇ハップ液(お湯1Lに六一〇ハップ1.5ml)で清拭し
 1日目:1%γBHC軟膏を首から下全身にくまなく塗布する。→6時間後入浴して洗い流す。
 2日目〜7日目:オイラックス軟膏を同様に塗布する。→24時間後入浴して洗い流す。
 8日目〜14日目:同上を繰り返す。

外用剤(γBHC軟膏・オイラックス軟膏など)の塗り方は、首から下全身に満遍なく・塗り残しなく・皮疹部だけでなく全体に塗ることが大事。特に腋窩・首・鼠径部・陰股部にたっぷりと。 処置は必ず手袋をはめて行う。1回の薬剤使用料は20gを限度にする。

硫黄剤使用のため皮膚があまりにがさがさして痒がる時は、一時硫黄剤の使用を休み、白色ワセリンなどで皮膚を休ませる。但し、硫黄剤を使う以上はある程度のがさがさは覚悟。角質が剥がれ落ちて疥癬虫が早く落ちることも治癒を早くするための一法。

頭はスミスリンシャンプーを使用。
頭部はあまり侵されないが、鱗屑が入り込むことを考えて施行する。



処置終了後

カーテン、床にダニアーススプレイ噴霧。退室時足元に駆虫スプレー噴霧。

処置を行った看護婦さん等は、γBHC軟膏を塗布する。妊娠中の看護婦さんはγBHC軟膏は避ける。

勤務終了時は、白衣、予防衣はロッカーに入れない。毎日交換する。靴にも殺虫スプレーを噴霧する。

院長室を含め、特に絨毯の部屋は一見離れていて関係ないように見えても念のため駆虫処置(バルサン・ダニアースなど)を行う。
(靴によって疥癬虫が運ばれる可能性あり)

患者さんには私物を出来るだけ少なくしてもらう。出来る限り処分する。

掃除婦さんへの啓蒙も必要。
 ・モップ・雑巾は、80℃・10分間で消毒後乾燥。
 ・お掃除はすぐ終わるなら素手で良いが、長時間・広範囲の場合はガウンテクニックが必要。
 ・床頭台・ドアノブ・処置台などはアルコールあるいは2,000倍六一〇ハップ液にて清拭。
 ・スミスリンパウダーをベッド周辺に撒布するのも一法。

疥癬虫検査の簡便法として皮疹の周囲をぺたぺたとセロハンテープで貼ったり剥がしたりして疥癬虫を集め、KOH(ズーム液)を少量たらしたスライドグラスにセロハンテープを貼り付けて鏡検する。