骨粗鬆症は怖くない  岩手医大附属花巻温泉病院 院長・整形外科 猪又義男


 骨粗鬆症(コツソショウショウ)は紀元前3世紀の人にすでに認められている古くからある病気である。一語で定義すれば骨量の減少である。骨は体重を支え、これを動かし、運ぶという運動器の軸としての働きを持つが、骨が脆弱化し本来の働きを十分に行う事ができなくなったものだけをいう。粗は文字どおり「粗い」で、鬆は松葉のように1本1本離れているという意味であるが読み方が人によって異なり、「コツソソウショウ」とも読む。中国では骨疎松症と書く。本疾患の代表的な重大な症状は背や腰の骨の脊椎圧迫骨折、股関節部の大腿骨頚部骨折、肩の部分の上腕骨頚部骨折、手首部の手関節骨折である。これらの発生を防ぐためには予防が最善の治療であろう。予防の重点は子供のときから強い骨を作り、十分なカルシウムの摂取と適度な運動、日光にあたり、喫煙、過度の飲酒を避ける事が重要である。寝たきり老人を作る恐ろしい病気であるが、癌のように悪性の病気ではなく治療法はたくさんあり、糖尿病や高血圧のように病気の勢いを抑えコントロールすることによって、まったく健康で元気に過ごすことができるということを認識し、病気との息の長い付き合いをしていくことが必要である。