熱中症                湯本診療所 佐藤全紀 

気象庁刊行の「二十世紀の日本の気候」によると、この百年間で日本の年平均気温は約1度上昇したそうです。熱中症にさらされる危険が増していると言えます。
 さて、高温による人体の障害(熱中症)には比較的程度の軽いものから、@熱けいれんA熱疲労B熱射病などがあります。@はふくらはぎ、肩、腹筋などに有痛性の発作的な筋の収縮が運動中や終了後に生ずるものです。発汗をともなう労作時に、水分だけ補給すると起こりやすくなります。Aは塩分と水分両方の喪失によるもので、めまいや疲労感、吐き気、頭痛などが生じますが、意識は清明で、熱射病ほど体温は高くないものです。Bは深部体温(口腔・直腸などの体温)が40.5度以上、意識障害、発汗の停止が特徴に挙げられます。意識障害は運動失調、被刺激性(ひしげきせい)、幻覚など多様で最も致命的な病態です。
 いずれの場合も高温環境から遠ざけ、涼しい場所に寝かせ、体に水をかけて風を送り冷却することが基本的な処置になります。@は食塩水またはミネラル飲料の補給で多くは軽快しますが、AとBの場合は医療機関の受診が必要で、特にBの場合は緊急を要します。
 「心頭を減却すれば火もまた涼ことわざし」の諺もありますが、高温環境(昼夜を問わず)では体調の変化にいち早く気づき、対処することが最も大切です。